田舎のダメお嬢と呼ばれて

ライター/イベンター/フォトグラファー ★お仕事のご依頼はiwamuraakiko★gmail.com(★を@に変えて下さい)

【断食ルポ】2-6(兵庫県淡路島)こんにちは、赤ちゃん

そうか、いま、私たちは赤ちゃんなんだ。

 

午後15時半、午後の巡回終わり。

ベッドに横たわり、レースカーテンが揺れるのをぼーっと眺めながら、ふっとその思いが湧いた。

 

窓の向こうには、爽やかな日光に照らされて一層彩りを増した、オレンジ色の屋根と緑の木々。空にはゆったりと雲が泳いでいる。

 

部屋の中には、昨日入所した二人のおばちゃま。

木製のつい立てを挟み、スースー寝息を立てて気持ち良さそうに眠っている。

 

「自分に120%の時間使えるなんて、幸せやわぁ~~」

 

最初に同部屋だったねえやんはとっても嬉しそうにそう言っていたけれど、

確かに、家事育児仕事恋愛沙汰、なーんにも追われず自分の思い通りに過ごせるというのは、大人にとって一番贅沢なことなのではないか。

 

そして、それってまさに、赤ちゃんの状態ではないか。

 

一日三回特製ジュースを飲み(薄あま牛乳なんで、ほぼミルク)、

一日2000ccの水分をとり(赤ちゃんもよく水飲んでますよね?)、

一日最低3回は巡回があって(赤ちゃんはもっと多いか)、

基本的に自分のペースで、興味に柔順でいていい。

 

なるほどここは、赤ちゃんに戻る権利を買う施設。

大人の保育園なのだ。

 

日頃まみれた色々な感情からいったん自由になり、

つるん、とした心に戻って、また明日からを大切に生きられるように。

 

TVの影響もあるらしく、そんな赤ちゃん達がいま、およそ40名入所しています。

 

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  • 5日目

<体重>

ー2.0kg

<食事内容>

朝・昼・夜 特製ジュース(薄あま牛乳)

合間に、水分2000㏄

<いま食べたい物>

特になし

<理由>

午前中は吐き気があったけど、午後から均衡が取れてきた気がする。

【断食ルポ】2-5(兵庫県淡路島)痩せたいのは、誰のため?

朝起きて体重を計ってみると、1.8kg減っていた。

おぉ・・・と呟き、経過表に記入する。(詳細は前回参照) 

iwamuraakiko.hatenablog.com

 

でも実は、私は自分の体型にそこまで不満がない。

 

「断食に行く」というとどうしても「痩せたい人」に思われるのだけれど、そうでもなくて。

 

今の体型はぽっちゃりに入ると思うけれど、中身は至って健康。

そして何より、今の私はダンサー志望ではないもの。

友達の赤ちゃんが気持ち良さそうにスヤスヤ寝てくれるこの二の腕を、今の私は気に入っている。

iwamuraakiko.hatenablog.com

 

去年、婚活サイトで出会った人に「お願いだから、痩せて欲しい」って言われ、なんだかなぁ・・・と議論を重ねつつも、痩せてみた。

 

でも3kg痩せたところで、あぁ、全然嬉しくないと思った。

 

自分のなかに必要性が見つけられなかったのだ。(そもそもやっぱり、30過ぎて「痩せてくれ」はナイと思うが、笑)

 

”心地の良い体型”というのは、やはり私は、自分で決めたい。

 

このマインドはたぶん、「外見で評価されてきたか否か」も結構関係すると思う。

 

「体型」からもっと広く「外見」へと話を広げてみたいんだけれど、

私は小5まで肥満児だったので、外見でポジティブ評価を受けた経験が一回もない。

 

なにくそー!と外見以外で評価されるように頑張った結果(書道とかピアノとかのソフト面)割とうまくいって、イジメとかもあまりなく育った。

iwamuraakiko.hatenablog.com

 

ヘタにチヤホヤされてきていないので、”外見が失われる”ことへの不安がないのだ。

 

あと、メイクとかトークも覚えてくるとそれなりにお声もかかるし、外国にいた時は太ってた時期の方がモテたりもして、外見なんてそんなもんか。なら自分の好きな外見でいたいわ。という意識に変わった。

 

「痩せたい」と思っているあなた。

 

それは果たして、誰のためだろうか?

  

「他人じゃなくて、自分の山を登りましょ」

 

この施設で繰り返し教わる、私のお気に入りの言葉だ。

 

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  • 4日目

<体重>

ー1.8kg

<食事内容>

朝・昼・夜 特製ジュース(薄あま牛乳)

合間に、水分2000㏄

<いま食べたい物>

そばとかうどんとか?軽くしょっぱいもの

<理由>

塩分が大好きなんだけど、今のところ取れてないから。

お腹すいた・・・。

【断食ルポ】2-4(兵庫県淡路島)静けさの価値

自然というものは、結構うるさい。

 

ピピピ・・・

チュチュチュ・・・

ジーーー

 

窓を開けたとたん、一斉になだれ込んでくる鳥や虫の音たちに

でもなんで、イヤじゃないんだろうなぁ・・・と考える。

 

4年前の今頃、私は東京の千駄ヶ谷というまちに住んでいた。

 

新宿、原宿、渋谷なども近いのに、緑が多い。

なんかゆったりしてるし人もお洒落。

 

初めて仕事で訪れた時、絶対に住みたいと一目ぼれしたまちだった。

 

がらんとした間取りに似合わずお風呂が広い部屋を何とか見つけ、

初めて経験する“憧れたまちに住む”という生活。

 

引っ越し当日、まだ段ボールの残る部屋をあとに、近くのカフェに行った。

キレイな黄色のカーディガンを羽織った男性が静かに食事をしている様に、

 

あぁ、越してきたなぁ・・・

 

って、すごく感動したことを覚えてる。

 

でもその日から、騒音に悩まされる日が始まった。

 

マンションの目の前には、新宿から原宿、渋谷も結ぶ明治通りが通っていた。

この道が、本当に24時間眠らない。

 

夜中も大きなトラックやパリピ達の車が行き来し、

朝はラッピングバスの大きな音楽で起こされる。

 

オフィスとして使う人も多い物件で窓がペラペラだったのもあるけれど、

都会の音と言う音に包まれて、気が休まらない思いを初めて実感した。

 

昼はクライアントのわがままに付き合い、

合間に好きな人との食事の予定を取り付け、

夜は同僚に愚痴飲みに付き合ってもらい、

夜中にやっと寝ようとするけど明治通りが寝かせてくれない。

 

まぁでも今思えば、気が休まらない状況は自分で作りだしていたのかも。

 

その後一年も経たぬうちに、歩いて15分ほどしか離れていない、静かな場所に引っ越した。

そこに3年住む間に仕事にも心境にも変化があり、

先日、故郷の宮崎に戻ってきたのだった。

 

ブーーーン

 

エンジン音がして窓に目をやると、コープの納品車が停まっている。

その音は一瞬で止み、またピピピ、チュチュチュ、ジーの大合唱が始まった。

 

この音がイヤじゃないのはきっと、人間の作りだした音が結局、一番気になるからなのだろう。良くも悪くも。

 

この自然の音と、頑張って会話しなくていい権利もまた、この施設の醍醐味。

 

静けさの価値に気付くと、人はうんと楽になる。

 

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  • 3日目

<体重>

ー1.2kg

<食事内容>

朝・昼・夜 特製ジュース(薄あま牛乳)

合間に、水分2000㏄

<いま食べたい物>

特になし

<理由>

SNSなどで写真見るといいなーとは思うけれど。(お腹は鳴っている)

【断食ルポ】2-3(兵庫県淡路島)本当の敵は、いびきではなく

午前1時、ベッドの上で、困ったな・・・と小さくつぶやいた。

 

「寝るのいつも遅いから・・・こんなに早く寝られるやろうかぁ?」

 

22時の消灯を前に明るく不安そうだったねえやんの豪快ないびきが、

ただいま部屋中に響き渡っている。

 

2度ほど、トイレに立ってみる。

すると一瞬は静まったりするものの、しばらく経つとまた音量がUPする。

 

身内であれば注意もできるだろうが、今日出会ったばかりでいくばくかの会話を交わしただけの間柄だ。困った・・・

 

と同時に、思い出が蘇った。

 

20代、まだまだ仕事も中途半端な時期、とある人に恋をしていた。

成り上がり系経営者。ボリューミーボディーと低い声がとても魅力的な人。

そのパワーに憧れ、嫉妬し、苦しいけど傍にいたくて、勝手にもがきながら恋をしていた。

 

当時住んでた笹塚の家で彼と過ごす夜は、

今みたいに設定温度3度ほど下げて少し凍え、

今みたいにいびきでなかなか寝付けなかった。

 

でも彼が見せてくれる新しい世界を、

私は絶対に手放したくなかった。

 

自分に足りないものを埋めてもらいたいだけの、

なんとまぁ、身勝手な恋だったのだろう。

愛おしくも恥ずかしい、不器用な20代だった。

 

午前1時半過ぎ、宿直室へ向かった。

いびきの音というより、じわじわと現れる過去の自分との対面に耐えられなくなったからだ。

 

「すみません・・・5人部屋なのでそういったこともご了承いただく形になります・・・」

「ですよねぇ・・・耳栓なんかはないですかね??」

「はい、事務所にありますのでお待ちください」

 

完全に寝起きのスタッフに、申し訳ないなぁ・・・と思いつつ、彼女が持ってきてくれたのは3種類の耳栓。

 

やっぱ、結構需要あるんスね。笑

 

一番安い60円を購入して部屋に戻り、何とか眠ることができた。

 

本日。

事務所に追加料金でいいから個室に変えられないかと相談したところ、結局(施設側が何かしら理由をつけてくれて)ねえやんが個室に移ることになった。

 

なんかごめんなさい…とも思うけど、5人部屋つぶすことになるから施設としても懸命な判断だろう。

 

1人部屋になってしまった広い部屋。

 

風の音にふと窓を見ると、もったりとした雨雲が空を覆い尽くしていた。

 

淡路島は今日と明日、雨が降るらしい。

 

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  • 2日目

<体重>

ー0.6kg

<食事内容>

朝・昼・夜 特製ジュース(薄あま牛乳)

※水分2000㏄(これが地味にキツイ。これからあと500飲まねば)

<いま食べたい物>

湯豆腐

<理由>

Facebookの写真で湯河原の大好きなお豆腐さんが出てきたから♪

湯河原十二庵 とうふ・生ゆば専門店

【断食ルポ】2-2(兵庫県淡路島)同部屋になったのは、ねえやん

今回の私は「断食2回目の人」である。

だから初めての人にとっては、立派な先輩なのである。

 

「やから荷物が少ないんやな~」

 

同部屋のボリューミー姐さん(以下ねえやん)にビックリされ、

イヤ荷物少ないのはどこででもなんですけど・・・の思いは胸に、微笑みをたたえる。

 

「洗濯はどうしたらええの?」

「電話はどこでしたらええかな?」

「イビキかいとったら言ってな?」

 

色々と聞いたり気を遣ったりしてくれるねえやんは11日コースとのこと。

大きな体を揺らして「暑い・・・」と言いながら時々笑わせてくれる、素敵な人。

一緒に頑張る仲間が面白そうなのは心強い。

 

11時半に入所し色々と検査を終え、午後15時。

今日入所した人を集めてオリエンテーションが行われた。

男性1名、女性5名の合計6名。平均年齢・・・63.2歳と言うところだろうか。

リピーターなのは、私ともう一人のおば様だけのよう。

 

「あまり他の入所者と話さないで、頭をカラッポにしてゆっくり過ごして下さいねぇ」

 

道場長の笹田氏が語るオリエンテーションビデオ終わりで、ねえやんが質問をした。

 

「読めてない本を持ってきたんやけど、あまり読まない方がええんかなぁ?退屈するかな思て音楽とかいっぱい持ってきたんやけど・・・」

 

お、いい質問。

 

「そうですねぇ・・・。ボーっとするのが大切ですからねぇ。本当に退屈するのか、やってみたらええかもしれませんねぇ」

 

なるほど、男性スタッフ、ナイスな返し。

すると、すかさず

 

「やること多くて結構忙しいから、全く退屈せーへんよ!」

 

とリピーターおば様がかぶせてきた。

 

一同がへーそうなんやぁの空気に包まれる。

 

そうそう、意外と忙しいから大丈夫だよ、ねえやん。

 

なんか明るい人が多そうな今回。

楽しい13日間になりそうだ。

 

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断食1日目

<食事内容>

昼・夜 特製ジュース(薄あま牛乳)

※合間に水分1500cc

<いま食べたい物>

にんにくと塩のきいたオイルパスタ

<理由>

二日酔い抜けて普通にお腹すいてるから