田舎のダメお嬢と呼ばれて

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【小話】14 とある三十路のおとぎ話。

※2013年の大晦日に書いたものに加筆しています。

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むかしむかし、お正月が億劫だった肥満児がいました。

 

その子は毎年、山の上にある、おじいちゃん、おばあちゃんのお家で、お正月を迎えていました。

 

先生だったおじいちゃん、おばあちゃんは「先生になると?お医者さんになると?」と聞いて来たりします。

でもその度に、歌手や芸能人など、普通の子どもと同じ夢を持っていたその子は、戸惑ってしまうのです。

 

でも、そんな事は言いません。

なぜならその子は、自分にとても自信がなかったから。

 

その子には、イケメンと美人な従兄弟がいました。都会からやってくる彼らはとても眩しくて、なんだか自分が恥ずかしいなぁ、とその子はずっと感じていました。

 

"運動もできないしデブだけど、勉強はできる自分"を一年間作り上げ挑むのだけれど、思春期なんてほぼ外見のコンプレックスから構成されているのだから、克服できるはずもなかったのです。


そのうち、その子はかねてからの望み通り、東京へ出て行きました。


でも、恥ずかしさや悔しさは、むしろ東京の方が多かったかもしれません。

 

沢山の試練にもがいたり、新しく知った楽しさと戯れたりしながら、その子は東京を、そして自分を、だんだん楽しめるようになりました。


その子は、おじいちゃんが急死したことをきっかけに、最近は年に二回帰省することにしています。

 

結婚し、ビジュアルもキャラも大成功な子どもをもうけた従兄弟たち。その親たちやおばあちゃんからの圧力は年々激しさを増していきます。


でもその子は、もう自分を恥ずかしがりません。

 

色んな価値観があることを知り、自分が輝ける場所も知り、自分が好きになれたから。

 

そして、信頼する占い師に、32と34で出産だと言われているからです。

 

そんなことをまっすぐな目で言う娘に、その子のお母さんはドン引きしています。


おしまい