やはりここにしよう、と意を決してドアを開ける。
「あら、いらっしゃい」
白髪混じりの細身ママの向かいで、おじ様が気持ちよさそうに歌っていた。隣には華やかなおば様。
「ビール下さい」と私。
「ハイボールできますか?」と友人。
「ママ、こんなに若い人が来たのなんて初めてじゃないの??」と歌い終えたおじ様が笑っている。
とりあえず、一安心だ。
仕事関連で知った「甲府ぐるめ横丁」。
一度どんな感じか見たくて、旅好きな友人を誘って甲府行きを決めた。
鴨と自然派ワイン→鹿と山梨ワインでふつふつと上がるテンション。
締めはやっぱりスナックだろう!と盛り上がったはいいものの、女2人で行けるスナック選びはなかなかの難題。
寒空の下を結構歩いてしまった結果、ぐるめ横丁に戻って「サザン」というスナックに決めたのだった。
竹内まりや 「駅」
久保田早紀 「異邦人」
森高千里 「気分爽快」
石川ひとみ 「まちぶせ」
etc...
「ゲストハウスってなに?」に私達が答え、
「明日どこ行ったらいいですかねー?」に皆が情報をくれる。
恵林寺はキレイよ。
不老園の梅がちょうど見頃じゃない?
県立美術館にはミレーが置いてあるんだ。
身曾岐神社は歌手のゆずで有名よね?
車があれば、西湖が静かで俺は好きっす。
小作でほうとう食べて帰ってねぇ!
途中、常連の先生やデロ酔いしたおじ様二人組も参加して、カウンター満席。
閉店の12時を目の前にして店内は大盛り上がりだ。
「恋人も濡れる街角」を気持ちよく歌い終えたおじ様にママが声をかけた。
「悩ましいねぇ〜」
なんて上品なリアクション!
声枯れてる系も良いけれど、サザンのママは、どことなく品が漂う系。
なんだか感動しながら、そろそろ行きますとお会計をお願いする。
すると、「もう?じゃこれ持って行って!」とママが手作りのサータアンダギーをくれた。
もらった袋がなぜかパリスヒルトンで、友人と爆笑。
「山梨にこんな若い人が旅行に来てくれるなんて本当に嬉しい!楽しんでいって!」
常連のおじ様と固い握手を交わして、お店を後にしました。
いやー、アツイ夜だった。
「とりあえずミレーは観よう。それ以外は朝の気分で決めるで、いいよね?」
ゲストハウスへ戻り、そこだけ合わせて就寝。
さぁ、明日も楽しくなるぞ。
甲府ぐるめ横丁