田舎のダメお嬢と呼ばれて

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【地域ルポ】31 (宮崎県串間市)猿の楽園にお邪魔したら

※3年ほど前の文章です

 

宮崎県の南部、もはや鹿児島県の方が近い地域に、「幸島(こうじま)」という、船でしか渡れない島がある。

 

約100匹の猿が棲む、小さな島である。

 

”猿”と言うと私は、小学生の時に襲われた野生猿と、大分県高崎山でイモを取り合う猿の2イメージしか持っておらず、おしなべて、強暴イメージだった。

 

だけど去年、幸島を訪れた際、そのイメージはガラリと崩れた。

 

「おお、出てきたね~。あれがボスですわ。」

 

船頭さんが言う先をみると、ちょいとドヤ感のある猿がこちらをじっと見ている。


森の奥からはキャーキャーという鳴き声が響き、わらわらと猿が現れ始めた。

 

あれ?なんかみんな、おだやか・・・

 

警戒するでもなく、媚を売るでもなく、「何しにきたの?」的な、ごく普通の感じで私たちの船を追って岩場を行く猿たち。

 

しばらくして、とある岩場で船が停まった。

 

私と友人の横を、研究チームがスタスタと降りて行く。

 

「浜が浅いもんですから、ここから浜までは岩をつたって行ってください」

と船頭さん。

 

オイオイまじか!!うちら完全に観光ルックだけれども!!

 

三十路を越えて岩場をつたう、という経験に友人と爆笑しつつ、フナムシに怯えながらなんとか浜まで着くと、早々についた研究チームが観察を始めていた。

 

見える範囲にいる猿は50匹ほど。


私たちには全部一緒に見えるのだけれど、研究チームの学生さんでも、もうだいぶ識別できるのだという。

 

飲食物を持ち込まない
猿とは目を合わせない

 

を守り、島までの唯一の交通手段の船(一人1000円~)を使ってまでこの島にわたる人は、今ではそんなに多くない。

 

それもあるのか、目の前にあるのは、まさに”猿の楽園”だった。

 

人間10名に対して猿50匹くらいなので、完全に人間が「おじゃましてまーす」な存在。

 

子ザルがツタでブランコしてたり、
血気盛んなの若猿が喧嘩していたり、
ぼーーーっと日向ぼっこしてる猿もいる。

 

湾のようになった浜から見える海と空はきらめいていて、振りかえると、木々達が風に揺れていた。「あんた誰よ?」って私を見てる猿と目が合いそうになって慌ててそらしてみたり。

 

1時間もいなかったと思うけれど、本当に不思議な体験だった。

 

「前に韓国の撮影クルーが来てね。わざと猿をけしかけて怒った顔を撮ろうとするんで、出禁になったんですよ。猿の性格が悪くなってしまうからね。」

 

帰りは私たちだけだったので、船頭さんが色々と話をしてくれた。


彼もまた、ずっとこの島を見守っている一人なのだ。

 

島という特性、水戸サツエさんという地元の教師と京都大学研究チームがずっと見守ってきたこと、観光客に餌付けをさせなかったことも影響して、幸島の猿は独特な穏やかさと、群の特性を持つ。

 

そんな幸島が、最近、陸続きになっていると聞いて心配していた。

 

あの穏やかな空間に悪い影響が出ないといいけれど・・・

 

でもそれが、台風でまた島に戻ったらしい。砂が大量に流されたためで、一か月は持つだろうと地元の新聞で読んだ。

 

なんと言うか、自然の大きさを感じる記事だった。

 

スローに営みを続けてきた自然と、急速にパワーを持っちゃった人間。

 

やっぱりパワー持ってる人間側がしっかりお勉強して、意識的でいることが大事なんだよな。