田舎のダメお嬢と呼ばれて

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小話200 膝小僧

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私が免許を取ったのは25歳の時だ。
久我山駅が最寄りの、杉並自動車学校に通っていた。

 

当時は夜働いていたので、
帽子でどすっぴんを隠しつつ、
昼間に、西永福駅から電車で通っていた。

 

「なんかカッコいいから」という理由で、マニュアルで入学。
オートマ限定で取る人が増えてた時代だったから、
「珍しいね?」なんておじさん教官に言われたりしていた。

 

教官の中で、特に印象に残っている女性がいる。

 

サラサラのロングヘアに、
しなりとした腰。
彼女が運転席に座ると、
膝丈のタイトスカートから、
形の整った膝小僧がちらりと見えた。

 

その膝小僧をそっとくっつけたまま、
細い手ですっとシフトレバーに触れ、
滑らかにギアチェンジして、
一切の無駄なく加速する。

 

落ち着いた低い声で
最低限の指示を出す以外は、
生徒なんかには何の興味もなさそうに
仕事をこなしていた。

 

その気だるさが、
いちいち色っぽくて、
私は完全に気後れした。
そして憧れた。

 

あれから12年経ったいま。

 

オートマ車のアクセルを踏みながら、
時々彼女を思い出す。

 

私も膝小僧をそっとくっつけて
彼女の気だるさを思うのだけれど、


あの色気は永遠に出ないのだろうなぁ…

 

と、毎度諦めるのだ。

 


#でも膝はつける
#ふと思い出した話
#車のある生活