田舎のダメお嬢と呼ばれて

ライター/イベンター/フォトグラファー ★お仕事のご依頼はiwamuraakiko★gmail.com(★を@に変えて下さい)

小話124 齋藤陽道さんとドッグレッグス

大きな失恋をして、当時住んでた千駄ヶ谷をフラフラと散歩していたら、ワタリウム美術館の前を通り、たまたまやっていたのが齋藤陽道さんの写真展だった。写真のなかの光や淡い色に、擦り切れてボロボロだった心が潤うのが分かった。あの時は本当に助かった。

 

その6年後。今の職場である図書館で手に取ったのが『声めぐり』。齋藤さんの文章は理路整然としていながらも生々しくて感動的で、またもや私を潤す。感覚を言語化するうまさ。書き手としてもこんなにすごいなんて、なんて人だ。

 

その中で、齋藤さんが写真を始めるきっかけとなったと紹介されていたのが『無敵のハンディキャップ』。障害者プロレスドッグレッグスの旗揚げからその後までを描いた話だ。冒頭、リングシーンから始まる。"肉の弾ける音“"骨があたる音”が聞こえる。一緒にリングに立ち、戦っているかのような臨場感。うー痛い。でも血が湧く。

 

私は、相撲の次にプロレスが好きだ。「相手への愛がないとできないスポーツだ」と友人が教えてくれた時からイメージが変わり、東京にいた頃は詳しいお姉さまに連れられて何度か観に行った。客席の温度がダイレクトにリングに伝わる感じ、選手たちのキャラの立ち方、汗、肉、血、声、どこまでも生々しい世界。

 

本の中では、選手個人のエピソードも丁寧に描かれているので、感情移入してしまう。日本にはびこる闇も浮き彫りにされる。健常者とは?障害者とは?老いとは?家族とは?テーマが目一杯詰まってるんだけれど、読み終えた後は不思議な爽快感の残る本だった。これまた、すごい本に出会えた。

 

ちなみに齋藤さんも「陽の道(ひのみち)」というリングネームでドッグレッグスに参加しているのだそう。どこまでも多才な人だ。観に行かねば。

 

 

声めぐり
https://www.e-hon.ne.jp/bec/SP/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033794178&Action_id=121&Sza_id=C0

 

無敵のハンディキャップ
https://www.e-hon.ne.jp/bec/SP/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033843026&Action_id=121&Sza_id=C0

 

障害者プロレス ドッグレッグス
http://doglegs.a.la9.jp/

 

写真家 齋藤陽道
http://www.saitoharumichi.com/