田舎のダメお嬢と呼ばれて

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小話210 赤蛇のrêve(レーヴ)

宮崎県に、好きなピアニストがいる。頻度高めにライブにも行っている。彼の曲と音は、本当に“整う”のだ。まるでヨガに行く感覚で、心静かに目を閉じると、ポーン、たららーんと、波のように音が広がってゆく。彼はMCもとっても静か。だからライブ中は、上質な静けさと音をたっぷりと味わえるのだ。毎度、はぁー整ったぁ〜と大満足で帰っている。


先週末も、宮崎市の住宅街にある小さなホールで演奏会が開かれた。


テーマは「rêve(レーヴ)」。
フランス語で「夢」だという。


ヴォーカルとチェロも入れて3人編成での演奏会だったのだが、中盤で、彼がいつもしない提案をした。


「ちょっと思ったんですが…昼の部はお客さまも少なくてリラックスした雰囲気なので…みなさんの最近見た夢を聞かせていただいて、それをテーマに即興で演奏できたらなって……」


会場が少しざわつく。
みんなチラチラと顔を見合わせて、うーん?と笑いあう。


「どなたか、夢を話してもいいよって方…いらっしゃいますか……?」


こういうAny volunteers?な状況のとき、学級委員気質の抜けない私は「誰もいないのなら協力せねば!」と思ってしまう。


ただ…ただっ!


その日の私の夢は、このおしゃれホールで言えるような内容じゃなかったのだ。


「あのですねぇ!実家の前の草むらから、いきなり蛇が出てくるんです!めちゃくちゃ大きくて赤い蛇で!その先に近所の子どもたちが遊んでいたから、私が守らねばー!って蛇に向かっていくんですよ!いやー、本当に強い蛇でしたー!体当たりして、力まかせにぐーーーっと蛇の軌道を変えて、結果勝つんですけどねっ!」


こんなナゾにたぎった夢、披露する雰囲気ではない。
ということで、他の観客のみなさんと同様、うーん夢ですかぁ…顔でやりすごし、結果、彼が最近見た夢から即興が始まり、すばらしい演奏が聴けたのでした。

 

以上、週末にすまし顔で参加した演奏会でドキドキした話でした。

 

 

横山起朗さんの新しいアルバム『If You Were Closer』

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